分院とは何か|本院との違いや分院開設の特徴について解説します

新たに分院を開設しようと考えていても、どのようなことに注意すべきかわからない人も多いのではないでしょうか。分院の開設は、時間や費用、労力を費やすので、失敗しないように知識を得ておくことが大切です。

この記事では、分院についての解説や、開設の際に気をつけておきたいことなどを紹介します。分院の開設を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

分院とは何か

病院における分院とは、本院と別の機能を有した医院のことを指します。基本的に本院とは別のものなので、分院にはトップに分院長が存在します。

分院を開設する際に重要なことは、医療法人を設置するという点です。医療法人になった場合は理事長という役職も生まれますが、本院長と分院長のどちらでも理事長になれるので、新たに理事長のポストに就く人を探す必要はありません。

分院の開設について

分院を開設するにあたり、どのようなタイミングや条件、準備などが必要になるでしょうか。それぞれみていきましょう。

分院開設のタイミング

分院を開設するためには、ベストなタイミングを見極める必要があります。ここでは、開設に適した2つのタイミングについて解説します。

経営が安定したとき

本院の経営が不安定なときに分院の開設を行うと、両方の経営がうまくいかなくなる可能性があります。一方、本院の経営が順調で安定していれば、次のステップとして分院の開設が自然とみえてくるでしょう。

たとえば、病院経営が成功して患者が増えた段階で、医療法人を設立する場合が多くなっています。さらに、患者が増えると予約などが混雑するため、規模の拡大を狙って分院を開設したいと考えるのが一般的です。

事業の承継とからむケース場合も

医院長が引退するなどの承継のタイミングで、医療法人の分院を新たに開設するというケースがしばしばみられます。現在クリニックで働く医師の高齢化が進んでいるため、今後も事業承継のタイミングで分院を開設するケースは増えるでしょう。

分院開設の条件

分院を開設するには、大きく分けて4つの条件が必要となります。どれも重要なので、必ず頭に入れておきましょう。

医療法人化していること

まず、分院を作るためには医療法人になっていなければなりません。つまり、分院を開設するのは個人ではなく、医療法人となります。

本院の院長が、本院と分院両方の院長を兼任することはできない

原則として、医師が開設できるクリニックは1つだけとなります。医療法によって、個人クリニックは開設者と管理者が基本的に同じでなければならないと定められているからです。そのため、1人の医師が本院と分院の院長を兼ねて開設したり運営したりすることはできません。

本院の理事長個人で分院開設する方法はある

本院の医院長は分院の医院長を勤めることはできませんが、分院を開設する際は医療法人化させるため、理事長個人が分院を開設するという方法を取ることは可能です。つまり、本院の開設者を医療法人にして管理者と本院長はほかの勤務医にさせれば、理事長が分院の分院長(開設者兼管理者)になることもできます。

分院長は分院長の責任で経営上のコストを負担しないといけない

医療法人化したとしても、本院と分院は基本的に別物と考えたほうがいいでしょう。本院は本院長の責任で経営にかかわる設備投資費用や借入れ、リースやローンの債務、賃貸契約といったコストを負担しなければなりません。分院長も分院に対しての経営にかかわる責任は同じです。分院は本院のおまけという位置付けではなく、独立性が求められます。

分院開設の準備

分院開設にはどのような準備が必要でしょうか。大切なポイントを3つ紹介します。

分院開設の目的を明確にし、資金についても検討する

分院を開設する目的が明確でないと、経営上の大きなリスクになりかねません。目的が曖昧であれば事業計画書を作成できなかったり、医療法人全体の経営が成り立たなくなったりする恐れがあるからです。

どの程度の設備がいくつ必要か、どのくらいの人数を雇えばいいかなども、分院開設のビジョンがなければ思い描くことはできません。逆に、目的がきちんと定まっていれば、それを実現するための費用などが明確になってきます。

また、分院開設当初は赤字が続くことが予想されるので、黒字化するまでは金融機関からの借入れも検討する必要があります。上記のような経営に関することをきちんと考えるためにも、分院開設の目的を明らかにし、資金についてもよく検討する必要があります。

行政に対しての準備

医療法人化するためには、定款の変更や開設許可の申請といった行政手続きを行います。事業計画が行政に認められない場合は分院開設が行えないので、行政を説得させるだけの計画を立てる必要があります。

その他の準備

行政手続きと並行して、不動産の賃貸契約または購入、空間の設計および施工などを進めていきます。さらに、資金調達や人員の確保、医療用設備のリースまたは購入、Webサイト作成などの宣伝広告といった準備も必要です。

本院を開設したときよりも分院を開設するときのほうが、やることが多くて複雑になることが予想されるため、計画的に準備を進めていくことがポイントです。

分院開設のメリットと注意点

分院を開設するにあたり、どのようなメリットや注意点が考えられるのでしょうか。2つのメリットと4つの注意点を説明します。

分院開設のメリット

機能を本院と分院とでわけることができる

分院には、本院と異なる機能や特色を持たせるメリットがあります。本院が外来専門の診療所として運営されている場合、分院には住宅診療専門などの本院にはない機能を新しく設けることが可能です。本院が整形外科の場合は、リハビリ専門のクリニックを分院として設けることもできるでしょう。

診療地域の拡大や、コスト削減

分院は、県をまたいで設けることも可能です。その場合は広域医療法人となるため、定款変更許可申請が必要になるケースもあり、より複雑化してしまいます。しかし、活動の場を幅広い地域に広げたい場合は挑戦してみましょう。また、分院を開設すると本院との共同購入によって、費用削減につながるメリットも発生します。

分院開設の注意点

分院の院長への待遇に注意する

分院長への待遇は、もっとも気を付けなければならないことといえます。法律上は、本院長と分院長はそれぞれの病院の長です。しかし、実際には本院長が主に経営を担当しており、給与面での待遇もいいということがあるでしょう。

ただ、分院の税務申告などは原則として分院長がその責任のもとで行うと定められています。そのため、本院長と分院長の間で大きく待遇面の差があると、その調整が難しくなります。

優秀な人材確保ができるかどうか

分院を任せられるほど、医師としての腕や経営者としての才能を持っている人材をみつけることは、簡単なことではないでしょう。分院を開設できる本院長(理事長)と同等の力を持つ医師は、それほど多くありません。

分院の経営がうまくいくかどうかは分院長にかかっているといっても過言ではないので、優秀な人材を確保できるように努力する必要があります。分院の開設まで時間がある場合は、人材の育成に力を入れることもよいでしょう。

分院開設までに時間がかかる

分院は、思い立ったらすぐにできるものではなく、各種行政手続きなどを行わなければならないため、開設までには結構な時間を要します。

また、手続きをするところは法務局や保健所、厚生局などたくさんあります。手続きによっては期限が決められており、それを過ぎれば申請が翌月になってしまうものもあるので、注意をしましょう。開設までに通常は数カ月間かかるので、余裕を持って計画を立ててください。

分院の運営は難しいということを認識しておく

上記3つの注意点からわかるように、分院の開設にはさまざまな問題をクリアしなくてはなりません。分院運営は難しいということを念頭に置いたうえで、これらの問題をクリアするためにはどうするべきかを考えるとよいでしょう。

歯科や自由診療を行うクリニックに分院を設けているところが多く見られますが、分院の失敗で本院も共倒れにならないようにすることが重要です。分院を開設にあたっては、本院を開設したときよりも困難が多いと意識しておきましょう。

分院開設を成功させるためにどうしたらいいか

分院の開設を成功に導くためには、どのような点を押さえておけばいいのでしょうか。4つのポイントを紹介します。

分院に対し、本院の理念をきちんと共有する

分院にも本院の理念を行き渡らせるため、開設時には本院から人材を派遣する方法があります。分院の経営がある程度軌道に乗るまで、本院のスタッフに関わってもらうことで、運営ノウハウの共有が可能になります。

本院と分院でまったく違う考えのもと運営していると、同じ医療法人として成立しなくなってしまいます。そのため、理念の共有が不可欠といえます。

信頼できる医師を確保する

制度上、本院長は分院の運営にあまり深く関わることができないので、分院を任せるに足りる医師が必要不可欠です。候補者がみつかったら、分院を任せられるかをよく見極めましょう。

また、分院長とは普段からコミュニケーションを取っておくことが重要です。腕の立つ医師なら自分でも開業したいと思う可能性があるので、本人の開業意志なども確認しておく必要があります。

分院の院長のモチベーションを向上させる方法を考える

分院長の仕事に対するモチベーションを上げるためには、給与体系はもちろんのこと、診療や医院経営に対する考え方をよく確認しておくことが重要です。給与体系に関しては、実質的な成果との折りあいをどうつけるかが重要なので、しっかりと考えておきましょう。

分院長とは報酬額や昇給、勤務条件などを話し合い、お互いが納得できるラインを確認する作業を怠ってはいけません。分院長が待遇に不満を抱き、最終的に退職してしまったら、分院が閉院になる恐れもあります。そういった事例は実際に数多く起きているので、とりわけ注意しましょう。

専門家の意見を聞く

分院開設では、各種手続きや人材の確保など、やらなくてはならないことが多くあります。また、Webサイト制作や広告戦略も、新たなエリアで患者を集めるために重要なことです。

したがって、これらの開院の準備を円滑に進めてくれる専門家を活用することは、分院運営を成功に導くための方法のひとつです。

まとめ

分院の開設は、医療法人化や各種手続きがあるだけでなく、分院を任せられる優秀な人材の確保もしなければなりません。分院の開設に興味がある人は、専門家の意見を一度聞いてみることをおすすめします。

STスマイルは、専門家と連携して、開設地の選定からスタッフの採用、開業資金調達まで、分院開設に必要なことをトータルサポートします。開設後は、短・長期戦略や自院分析、市場分析などを論理的に構築することも可能です。さらに、Web広告の運用やWeb担当実務も提供できます。分院運営を成功に導くために、ぜひ一度お問い合わせください。

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