開業医として医療を追求したい、地域医療に貢献したいと考え、独立に踏み切る人も多いでしょう。しかし、いざ開業してみたら、思ったように集患できないという声があるのも事実です。
この記事では、クリニックの開業について失敗しないために必要なことを解説しています。状況別の失敗例についても紹介しているので、これから開業を考えている人はぜひ参考にしてください。
開業医も経営力を求められる時代
クリニックの数が飽和状態の現代において、開業医になっても必ずしも成功するとは限りません。開業には多くの費用を必要とするため融資を受けることが多く、それにより借入金の返済に追われてしまう人もいます。診療科目や立地条件などさまざまな理由により、集患がうまくいかないということもあります。
また、これまでは勤務医として病院に守られていた立場から、今度は自分がスタッフを守る立場に変わります。労務や人間関係のフォローなど、スタッフのケアは経営に必要不可欠です。
開業エリアの選別なども重要視されますが、人気エリアや激戦区などに開業する際は、地域の情報収集や宣伝なども手掛けることになります。開業を成功させるには医療技術だけでなく、医師本人の経営手腕が問われるのです。
開業で失敗しない8つのコツ
ここからは、開業に失敗しないための主なコツを8つ紹介していきます。
クリニックのコンセプトを明確にする
まずは自身のクリニックの診療方針や経営理念を設定しましょう。どのような患者をターゲットにするのか、どういった治療を施していくのか、サービスの強みを明確にすることで、他のクリニックとの差別化を図ります。
クリニックの方向性が定まれば、物件を探すうえでの条件も見えてきます。特に、医療ビルや医療モールは運営会社の方針や規則もあるため、目指す方向性とマッチングするかどうかをしっかりと検証しましょう。
開業に十分な資金を用意する
開業には、開業前にかかる「初期費用」と、開業後にかかる「運転資金」が必要です。初期費用には、テナントを借りる場合の前家賃、戸建てなら土地代を含む物件費用のほか、内装工事費や医療機器代などがあります。運転資金は家賃や人件費、宣伝費となります。
最初が肝心とはいえ、高額な検査機器を購入したり、内装を豪華にしたりするのは失敗のもとです。初期投資にはなにが必要なのかよく見極め、十分な資金を用意することが肝心です。
開業する場所を分析する
開業を考えている場所の特性を知っておくことも重要です。街の住民はファミリー層が多いのか若者が多いのか、またはビジネス街なのかでも必要とされるクリニックのタイプは変わります。
また、開業に選ばれやすいのは駅前の立地ですが、距離だけで決めてしまうのは早計です。たとえば、駅から近い立地であっても、駅の裏側にある建物だったため、人の動きがほとんどなかったというケースもあります。実際に開業したら周りにはすでに同じ診療科目のクリニックがあり、競合で負けてしまったというケースもあります。
開業したい場所の目星がついたら、できるだけ現地に足を運び、状況を分析するようにしましょう。
開業形態を決める
戸建てで開業する、医療モールに入るなど、クリニックの開業形態はさまざまです。たとえば、医療モールなどは同じモール内の他のクリニックとの連携も必要です。連携がうまくいけば患者を紹介し合うことも可能ですが、同じような科を診る場合は患者の取り合いになる可能性もあります。
開業形態を決める際は、それぞれ特徴を把握し、メリット・デメリットをふまえたうえで検討することが大切です。可能であれば開業前に友人や先輩のクリニックを見学させてもらうなどして、どの開業形態が自分に合っているかを比較するとよいでしょう。
集患の準備と実行
集患にはいろいろな方法が考えられますが、最も効率よく集患を図るためにはホームページによるアピールがかかせません。スマホに対応しているサイトであれば、なお集患力は強まるでしょう。ホームページにはクリニックのコンセプトや、強みを掲載します。SNSを活用したりSEOの対策をしたりすることも効果的です。
地域密着型のクリニックであれば、口コミによる集患にも注力しましょう。よい評判が広がれば、それだけ患者さんは集まってきてくれます。地元の患者さんを大切にして、地域の集会などにも積極的に参加することが大切です。
院内スタッフや他クリニックとの人間関係
クリニックを運営していくうえで、トラブルが多いのが人間関係です。特に、人が増えれば増えるほど、院内でのいざこざが生まれたり、患者とスタッフでもめてしまったりする可能性が高まります。給与や就業規則は事前にきちんと設定し、スタッフとは日ごろからコミュニケーションを取るようにしましょう。
また、医療モールなどにテナントとして開業する場合は、他のクリニックの医師とのコミュニケーションも必要です。こちらも日々の意思疎通を大切にし、宣伝や集患などお互いに協力し合うことが大切です。
経営力を磨く
クリニックの運営は企業経営と同じです。長く運営していくには基本的な経営力を身に付けなくてはなりません。
毎月の収支や経費の計上はもちろん、人件費などもしっかりと管理する必要があります。特に人件費はセンシティブな問題で、スタッフのやる気に直結します。適当に設定してしまうとスタッフの士気も下がり、ひいては病院の評判に影響するので注意が必要です。信頼できる税理士や社会保険労務士を見つけて、相談するのもよいでしょう。
周囲からのアドバイスも大切にする
クリニックの開業や経営は自分一人の力で成功するものではありません。院内スタッフからの要望は、現場で働く生の意見です。意見があった場合は、しっかりと考慮するようにしましょう。ときには友人や家族、コンサルタントや税理士など、周りの人からのアドバイスにも耳を傾けることが大切です。
医療や経営、不動産など、さまざまな知識が必要とされるクリニックの開業をスムーズに進めるには、ノウハウがあるコンサルタントをパートナーに選ぶのもひとつの方法です。
集患マーケティングとホームページ制作を手掛けるコンサルティング会社のSTスマイルであれば、トータルサポートによる再スタートや再成長を実現できます。
税理士、弁護士、医療経営士と連携し、資金の再調達・院内コンセプト再設計や修正のほか、スタッフ採用や教育、労働規約の改定など、さまざまな方面でのサポートが可能です。開業や集患にお悩みの人は、ぜひ一度ご相談ください。
開業に必要な資金の目安
一般内科をテナントで開業した場合を例に挙げると、開業資金はおよそ8000万~9000万円となります。融資を受ける場合、自己資金は開業資金全体の少なくとも5%、できれば20%を用意することをおすすめします。ただし、自分の土地を使った戸建てか、医療モールに入るかでも必要な資金額は変わります。
開業資金には運転資金も含まれています。開業直後で売り上げが見込めない時期に使う生活費や、人件費なども事前に用意する必要があります。
クリニックの開業での失敗例
開業後に失敗してしまった例もあります。ここでは、具体的な失敗例を見ていきましょう。
ビルの上階に開業したら認知されなかった
人目につく立地に開業することは非常に大切です。ビルの1階や、目立つ商業ビルにテナントを借ることは、それだけで集患力が期待できます。しかし、駅チカ物件や繁華街の中のビルでも、ビルの1階と上階では患者さんからの認知度がちがいます。目立たない上階に開業してしまうと、駅前であっても人に知ってもらえず、思うように集患できないケースもあります。
一方で、メンタルクリニックなどは患者さんのプライバシーに配慮するために、ビルの上階や大通りから少し離れた場所などに開業するのがよいとされています。
賃料や人気エリアだけで選んだら競合だらけだった
賃料や人口の多さだけでなく、徒歩圏内に競合となるクリニックがあるかどうかも視野に入れてエリアを選定しましょう。たとえば、小児科を開業する場合、ファミリー層が多いかどうかだけで判断してしまいがちです。しかし、すでに複数の小児科が開業していたため、新規参入で失敗したというケースもあります。
同じ科を診るクリニックの数を事前に把握してエリアを選ぶと、成功の可能性が高くなります。また、患者さんのターゲットをファミリー層にするならば、駐車場の有無などもポイントとなります。
人間関係のトラブルでスタッフの退職が続いた
どんなによい腕を持っていようと、人が足りなくては、医療現場は回りません。診療や経営などに忙しくてスタッフとのコミュニケーションを十分に取れないと、スタッフ同士で何が起こっているのかを把握できません。人間関係のトラブルによってスタッフが退職し、経営が成り立たなくなるケースもあるのです。
福利厚生や業務フローに問題があると、スタッフの不満もたまりやすくなるため改善が必要です。日ごろからスタッフの意見や要望には耳を傾ける意識を持ちましょう。
開業医に向いている人
開業医には医療技術や知識だけでなく、経営力やリーダーシップ、地域とのコミュニケーション能力が求められます。そのため、経営や商売にも興味がある人や、地域の発展や地方活性化にも協力したいと考えている人が向いているといえます。
一方で、数字や金銭を扱うことに抵抗があったり、人に指示を出すのが苦手だったりする場合は苦労する面もあるでしょう。また、何事も完璧を求めず、不測の事態にも柔軟に対応できるような、ある程度は楽観的な性格の方が開業医には向いています
しかしながら、ひとりで開業計画を進めるには限界があり、不安に思う人も少なくありません。開業の際は信頼できるパートナーとなる、コンサルタントや広告会社を見つけましょう。
まとめ
クリニックの開業を失敗させないためには、開業形態の特徴や経営のためのポイントをおさえつつ、事前にしっかりと準備を進めることが大切です。しかし、資金調達から不動産の選定、スタッフ雇用など専門知識や法律の問題までひとりで対応するのは大変なことです。
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