医院やクリニックの広告・宣伝を行うにあたり、「医療広告ガイドライン」に注意しなければならないことを知っていても、具体的な内容を把握していないケースも多いでしょう。
この記事では、開業に向けて準備すべき広告類やスケジュール例、医療広告ガイドラインの概要や、禁止項目、広告可能事項の限定解除のための条件などを解説します。さらに、薬機法及び景品表示法における広告規制、押さえておきたいポイントなども紹介するので、ぜひ役立ててください。
クリニック開業に向けて必要な広告・スケジュールは?
まずは、クリニックを開業するにあたり、必要な広告やスケジュールを確認していきましょう。
開業やリニューアル時に必要な広告一式
医院やクリニックの開業時、あるいはリニューアル時にはさまざまな広告の打ち出しが必要になります。代表的な例は以下のとおりです。
・Webサイト制作
・ロゴデザインの作成
・看板の作成
・診察券の作成
・挨拶状の作成
・チラシなどの印刷
Webサイトやチラシ、口コミサイトなど、適切な呼び込み方はエリアなどでも変わります。広告が不十分だと思うような集患につながらないため、効果的な方法を検討することが大切です。
集患するための広告・宣伝のスケジュールイメージ
各広告や宣伝のスケジュールイメージを見ていきましょう。
・Webサイト:開業4~5カ月前に打ち合わせ、3~4カ月前にデザイン決定、1カ月前に本アップ
・ロゴ、チラシ、診察券:開業4~5カ月前にデザインを検討、3~4カ月前に決定、3カ月前に納品
求人広告については、基本的には開業の2〜3カ月前を目安に掲載・募集を行いましょう。それに伴って、従業員の研修は開業の1カ月前から行うスケジュールにすると、余裕を持って開業できます。
広告宣伝費の重要性
特に開業前においては、開業後の患者数に直結するため、広告宣伝活動は欠かせません。広告宣伝活動がないと、どのような病院なのかわかってもらえず、十分に集患できません。
しかし、医療機器や内装にお金をかけているのに広告宣伝費が極端に少なかったり、あるいは宣伝する期間が短かったりするケースも多いのが実情です。広告宣伝には十分な期間と費用をかけて、安定した運営をしていきましょう。
「医療広告ガイドライン」とは?
医療広告ガイドラインとは、医療機関における広告に関する決めごとです。対象範囲や掲載禁止事項などを詳細に定めています。
医療業界は人の生命に直接的に関わるため、過度な広告などによって、患者が不当に誘引されてしまうことを防がなければなりません。そのため、医療広告ガイドラインは、適切な情報を可能な範囲で伝えることで、人の命や体を守ることを目的としています。2018年6月に改正され、さらに厳密なガイドラインが組まれています。
規制を受ける対象は?
医療を行うすべての病院、あるいはクリニックが対象となります。歯科医師業も含まれます。
医療機関も広告規制の対象となった背景とは
医療機関も広告規制の対象となったきっかけは、美容医療関連のサイトでした。改定前までは虚偽の情報や信ぴょう性のないものが盛り込まれた美容医療関連サイトがあふれていたからです。その情報を鵜呑みにしてしまう人が多かったため、医療機関も広告規制の対象となりました。
「医療広告」とされるものには何がある?
医療広告で規制対象となる主なものは以下の通りです。
・チラシ
・パンフレット
・折り込み広告
・ポスター
・看板
・ネオンサイン
・アドバルーン
・新聞紙
・雑誌
・テレビCM
・メールマガジン
・インターネット上の広告
・不特定多数への相談会
・口頭で行われる演説
一方で、広告の規制対象とならないものには、主に以下のようなものがあります。
・学術論文、学術発表等
・新聞や雑誌などの記事
・患者の体験談や手記
・院内に掲示または院内で配布しているパンフレット
・医療機関の職員募集広告
医療広告で禁止される項目とは?
続いて、医療広告で禁止されている項目を具体的に見ていきましょう。
虚偽広告
虚偽広告とは、事実と異なる情報が掲載されている広告のことです。たとえば、「絶対成功する手術を行います」というような表現は医学的観点からいっても禁止されています。虚偽の広告によって、適切な医療を受ける機会を失ってしまったり、最適でない医療を受診してしまったりする可能性があるためです。
誇大広告
事実よりも効果があるという印象を与えるような誇大広告も禁止されています。たとえば、知事からの認可を得て病院を開設することは法律上の義務ですが、あたかも特別に認可を受けているかのように広告することも誇大広告にあたります。虚偽広告と同様に、患者から適切な医療を受診する機会を奪ってしまうため、禁止されています。
他の病院などと比較する比較優良広告
ほかの病院と比較した際に、自院のほうが優れているとしても、その事実を広告として打ち出すことはできません。たとえば、「都内一の医師がいる病院です」という広告を打ち出すことは禁止されています。適切な医療受診機会を奪ってしまう可能性があるほか、平等性を失ってしまうためです。
患者などの主観・伝聞に基づく治療内容や効果に関する体験談
患者の体験談、いわゆる口コミを広告としてWebサイトなどに掲載することは禁止されています。主観的な内容が多く、患者が適切に判断できなくおそれがあるためです。
ただし、個人が運営しているWebサイトやSNSなどで、病院側が掲載を依頼していないと認められた場合には、これらの口コミは広告に該当しないとされています。
治療等の内容・効果を誤認させうる治療前後の写真
いわゆるビフォー・アフターのような治療前後の写真を掲載することも禁止されています。治療の効果は個人によって異なり、最も効果が見られた写真を掲載すると、患者に誤認されてしまう可能性があるからです。治療前と治療後の写真を並べて掲載した場合は、広告として使用できません。
公序良俗に反する内容の広告
医療業界以外でも禁止されているように、公序良俗に反する内容の広告は掲載禁止です。わいせつな内容、残虐な画像、差別的な表現などがあてはまります。見た人が不快な気持ちになる可能性が高いからです。社会通念上ふさわしくない内容は、広告に掲載しないようにしましょう。
医療法の広告可能事項の限定を解除するためのWebサイトの条件
広告可能事項の限定を解除するためには、4つの条件を満たしたWebサイトであることが必要です。4つの条件は以下の通りです。
・患者が広告内容に関して問い合わせをするための電話番号やメールアドレスが掲載されている
・自由診療に関する情報を記載する際は、あわせて必要な治療内容や費用、治療回数や期間などを明記している
・自由診療に関する情報を記載する際は、伴うリスクや副作用についても記載している
・患者が自ら求めて入手できる情報を掲載している
以上の4つを順守していれば、ある程度自由に宣伝することができます。
医療広告を規制するその他の法律
医療広告ガイドライン以外にも、医療広告を規制する法律があります。2つの法律を見ていきましょう。
薬機法
薬機法とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」のことです。医療に関する法律のなかでも、特に医薬品や医療機器などの品質や安全性などの確保を目的としています。薬機法では、医薬品や医療機器の誇大広告を禁止したり、あるいは承認される前の医薬品や医療機器の広告を禁止したりしています。
従来の法律では、得られる経済利得に対して罰則が少なすぎるとして、2019年11月に法改正がなされました。改正後は、虚偽または誇大広告によって医薬品を販売した製薬会社などに対して、該当商品の売上高の4.5%を課徴金として徴収する制度が設けられています。
景品表示法
景品表示法とは、「不当景品類及び不当表示防止法」のことです。すべての商品及びサービスにおいて、消費者に誤認されるような誇大広告や虚偽広告を禁止し、さらに過大な景品などの提供も禁止しています。当然、医療においては患者に誤認されないように適切な表示をしなければなりません。
医薬品のパッケージなどはもちろん、チラシやWebサイトの表示、テレビやラジオのトークなどもその対象となります。また、景品類に関しては、最高額や総額などの規制が設けられています。
まとめ
医療機関の開設の際には、広告・宣伝が非常に重要です。ただし、医療広告を打ち出すときは、ガイドラインの規制を守らなければなりません。そのため、正しい知識がないと、ガイドラインに抵触してしまう恐れもあります。不安な場合は広告運用を含めて、プロに相談することも一つの方法です。
STスマイルでは、各士業と連携し、開業地選定・資金調達・設計・医療機器選定交渉・スタッフ採用・労働規約の策定などトータルサポートを行っています。また、Web広告運用や病院外スタッフとして、Web担当者実務も提供しています。ぜひ一度ご相談ください。
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