【クリニック開業】全体スケジュールと医療スタッフ採用について詳しく説明

クリニックの開業を目指す際に気をつけなくてはならないのが、開業までの全体スケジュールです。いつまでに何をすべきなのか、おおよその流れがわかっていると開業準備もスムーズに進みます。

この記事では、開業までの全体スケジュールを紹介し、特に重要事項である医療スタッフの採用について詳しく説明します。ぜひ参考にしてください。

目次

そもそもクリニックと病院の違いとは?

クリニックと病院は、患者を治療するという意味では同じ施設のように思われますが明確な違いがあります。それは、入院用のベッドの数です。

医院やクリニックと呼ばれる診療所は、「入院用のベッドが19床までの施設」と医療法で定められています。ですので、駅や市街地の看板等で「Aクリニック」「B医院」「C内科」と表記されている施設はすべて診療所となります。また、診療所は「病院」という名称を使用することはできません。病院とは、「20床以上のベッドがある施設」と定められているからです。

クリニック開業までのスケジュール

クリニックを開業するまでにどんな準備が必要なのか、全体スケジュールを説明します。

開業を考える場合、開業したい時期の1年以上前から準備を始めましょう。10ヶ月ほど前から始めることも可能ですが、何かと慌ただしくなってしまうため、可能ならば1年半前くらいから始めるのをおすすめします。前もってスケジュールを立てることで、経営理念の組み立てや、複数の候補地での綿密なエリア調査が可能になるため、余裕をもって準備を進めることができます。

また、一般的に開業時期は、4〜5月が多くなっています。この時期の開業が多いのは、人の出入りが多い時期だからといわれていますが、明確な理由はありません。

弊社では、内科であればインフルエンザの流行前に開業して集患をはかるなど、クリニックの開業に有利な時期を見極めて、戦略的にスケジュールを立てることをおすすめしています。

1.開業の動機を考える

まず最初に、開業する理由や目的など、開業にあたっての動機をしっかり考えることが大切です。

最初に医療理念や診療方針を策定することで、開業形態や市場選定、機器選定、事業計画、融資計画などクリニックを開業するための方向性が定まります。

例えば「開業後はどのような人に対してどのような診療をしたい」地域の高齢者が対象なのか、学生やサラリーマン中心の若年層なのか、子どもを診る小児科なのか、女性が対象の産婦人科なのか、患者の年齢層や診療科目によって大きく変わります。

そのため、医療理念や診療方針はよく吟味する必要があります。理念や方針などがうまくイメージできないときは、開業する動機を深く考えることをオススメしています。

とはいえ、考え方・自己分析・自己探索などある程度ノウハウやコツといったもので、お手伝いできるのでお気軽にご相談ください。

2.開業地を選ぶ

開業の動機が定まった後は、対象となる患者に合わせて開業地を選びます。ここでは、開業地を決めるときの流れやポイントを説明します。

開業場所の形態を決定する

開業地を選ぶにあたり、まずは開業場所の形態を決定することが重要です。「戸建て」「ビル診療」「医療モールに入る」が主な選択肢になります。自身のクリニックに合った形態を選びましょう。

希望するエリアを決める

どのエリアに開業するかは集患に直結するため、慎重に検討しなければなりません。小児科ならば、ファミリー層が多く住んでいるエリアにするなど、ターゲットによっても選ぶ場所は異なります。

不動産会社や専門会社に依頼して物件を探す

物件選びは自分で探すのではなく、専門業者に依頼するのが一般的です。専門業者に依頼した方が、クリニックに適した物件を早く見つけられる可能性が高く、その間は他の開業準備に専念することができます。

紹介された物件を検討する

紹介された物件があるエリアの人口、年齢構成について「対象となる層に適合しているか」「どのくらいの集患が見込めるか」などを精査します。エリアの人の動きや交通機関なども開業地選びの大きなポイントです。

また、エリア内の競合となるクリニックの数や実態などをふまえ、自院がこの場所でやっていけるかどうか慎重に検討します。

3.開業のための資金調達をする

クリニックを開業するためには、まとまった資金が必要です。

ここでは、開業時に必要な資金調達について説明します。

開業資金の目安

クリニックの開業資金は、一般内科をテナントで開業した場合、およそ8000〜9000万円ほどかかります。戸建ての場合は、テナントで開業した場合のおよそ2倍の資金が必要です。

開業資金は、自己資金と融資でまかなうのが一般的です。自己資金は開業資金の20%を目安に用意します。20%としているのは、設備投資や運転資金などに余力を持たせるためです。

銀行の融資は、自己資金の10〜12倍まで借りることが可能です。自己資金が多いほうが、借り入れの際に利率を安くすることができます。また、医療モールで開業する場合は多少安くしてくれます。しかし、医療モールは集患の失敗例も多く、必ずしもメリットとはいえません。

金融機関へ融資を依頼する

融資をお願いする主な金融機関は、メガバンクや地方銀行、政府系金融機関などです。融資を受けるには、「事業計画書」を提出する必要があります。事業計画書を作成した上で、金融機関を説得できなければ、融資は受けられません。

融資を受けるために必要な「事業計画書」を作成する

「事業計画書」は融資が可能なのか、金融機関が判断するための基本材料となります。自分で作成するのは手間がかかるため、コンサルタントや税理士などの専門家に依頼するのが一般的です。

4.クリニックの内装工事と医療機器の選定

内装工事は、開業の1ヶ月前には完了し、運用準備中に改善のための改修をおすすめしています。そうすることで、納得がいかない部分があったとしても、直すための時間を確保することができます。

医療機器は、院長の治療方針や希望する診療に応じて決まるため、開業準備当初から準備を始めます。購入ルートによって大きく値段が変わるため、価格交渉の期間も必要です。

内装工事を業者に発注する

内装工事はクリニックの診療方針にしたがい、集めたい患者層を意識して決めます。しかし、患者目線であれもこれもと充実させると施工費が高額になる恐れがあります。コストと内容のバランスを考えることが重要です。

医療機器を選定する

現在は、病診連携のためにも電子カルテは必須です。これは診療科は関係なく、全てのクリニックについていえることです。電子カルテは種類が豊富なので、使いやすいものを選びましょう。

そのほかの医療機器は、診療方針や専門性に合わせて選択します。基本的にはリースになりますが、機器によってはコストが高いものもあります。本当に必要なものかどうか経営計画と照らし合わせて導入するようにしましょう。

メインで使わない機械であれば、中古も選択肢に入るかもしれません。ただし中古の機械は、保証やバックアップ体制がありませんので、あくまで一時しのぎといった使い方をオススメしています。(もちろん運よく安定的に長く使える中古機械もあります)

5.スタッフを採用する

専門看護師、心理士、理学療法士など診療科によって必要なスタッフを採用します。優秀なスタッフを集められるかどうかが、クリニックの運営を左右するため慎重に進めましょう。

スタッフの採用スケジュール

開業するためには、最低限シフトが回るだけのスタッフを採用する必要があります。スタッフの募集は、開業の2〜3ヶ月前に集中的に行いますが、希望通りのスタッフの質と数が採用できるとは限りません。

しかし、早めに募集を開始すれば、1度目の募集で集まらなかったとしても、ターゲットや募集文面を調整し再度募集をかけることができます。スタッフが集まったら、開業の1ヶ月前からトレーニングを行います。

スタッフの職種や募集人数

スタッフの人数や職種は、クリニックが無床なのか有床なのかで変わります。有床の場合は、入院患者のために栄養士や調理師、介護スタッフなどが必要です。

無床の場合、基本的には医師1名毎に、看護師2名、准看護師(パート)2名の採用をおすすめしています。受付スタッフは、医師1〜2名毎に2名ほどを確保できるとよいでしょう。

基本的に看護師は売り手市場で集まりにくく、募集の広告を出しても応募は少ないことが多いです。正看護師やフルタイムにこだわらず、准看護師やパートも視野に入れて募集するようにしましょう。

スタッフの募集広告

スタッフを募集するためには、求人広告を出すのが一般的です。ハローワーク、医師会、新聞、学校、インターネット、紹介など求人媒体は多数ありますが、費用やメリット・デメリットが異なります。

例えば、ハローワークは無料で出せるのがメリットですが、全体の求人総数が多いため、ライバルが多いのがデメリットとなります。新聞や折り込みチラシの広告は、近隣の住民にアプローチしやすくなります。媒体によって求職者の質が変わるので、予算や目的に応じて募集広告を選び、採用を行いましょう。

スタッフ採用の際のポイント

ここでは、スタッフ採用のコツや賃金の設定などを解説します。

スタッフ採用のビジョンを持つ

まず自分のクリニックに、どういう人材が何人必要なのかを把握しておく必要があります。

応募者はホームページを見ることが多いため、開業前にしっかりと作り込んでおきましょう。

採用のコツは、クリニックのホームページの求人広告やウェブ広告の訴求内容を充実させ、応募者に明確な就業のイメージを持ってもらうことです。たとえば、クリニックの治療理念や就業後の担当や業務の内容、ライフワークバランスやキャリアのイメージ、充実した福利厚生などを伝えることで応募者に就業意欲を持ってもらいます。

治療理念を伝えるのは、クリニックの雰囲気や院長の考え方との相違がないようにするためです。就業後の担当や業務の内容を伝えることで、応募者が持っているスキルとのミスマッチを防ぐことができます。

家事・育児と両立したい応募者もいるでしょうから、ライフワークバランスについても説明します。最後に就業後のキャリアイメージを伝えることで、中長期的に働きながら成長し、クリニックに貢献してもらえる人材を確保します。

賃金の設定について

賃金の設定は、クリニックにとっても応募者にとっても非常に重要です。賃金が低すぎると人が集まらず、逆に高すぎるとクリニックの経営を圧迫します。そのため、職種や地域に合わせた賃金設定が必要になります。賃金設定に不安がある場合は、同じ地域の求人広告を参考にするとよいでしょう。

ただし、診療放射線技師や理学療法士など専門スタッフが必要な場合、同じ地域で同じ職種の参考になる求人広告が見つかるとは限りません。

競合や市場に合わせた柔軟な賃金設定を、具体的な数字を持って提案できる専門家に相談するのも有力な手段です。

6.開業するための行政手続き

開業するためには、行政手続きは必須です。「診療所開設届」を保健所に提出し、「保険医療機関指定申請」を厚生局に提出しなくてはなりません。手続きは、管轄の保健所や厚生局で行いますが、地域によって対応や書類の内容が異なります。

保健所には、テナントの契約前に必ず相談に行きましょう。場所によっては許可がおりないこともあります。契約後に不許可になった場合、クリニックにとって大きなダメージになってしまいます。

7.広告を打つ

クリニックによって異なりますが、ホームページや口コミ、ポスティング、看板、地域参加などの集患方法があります。

ホームページは、患者のためのコンテンツを充実させましょう。患者様の利便性を高めるために予約システムを導入するクリニックも多いです。待たずに診察を受けられるのは患者にとって大きなメリットですし、来院のきっかけになります。※受付の電話対応頻度が減るので、生産性の向上にも寄与します。ただし、診察コントロールが効きづらくなるので診療スタイルに寄るところも多くあります。

またクリニックを利用する患者は、近隣住民が中心となるため、地域の集まりに積極的に参加するのもおすすめです。看板やポスティングなども有効ですが、医療機関が出す広告については法的なルールや規制があります。看板やポスティングチラシを作成する際には注意しましょう。

まとめ

クリニックの開業は、余裕を持って計画することが大切です。開業スケジュールの作成や人材の採用、集患などやるべきことは沢山あります。開業には多額の資金が必要ですし、失敗は許されません。不安なことがあれば、専門家へ相談することをおすすめします。

STスマイルは、税理士,弁護士,医療経営士と連携し、開業地の選定、開業資金の調達や設計、医療機器の選定や交渉、スタッフの採用、就業規則の策定などをトータルサポートします。

また、開業後も自院分析から市場分析、短期〜長期戦略、リピート対策までロジックを持って構築し、クリニックの成長を継続させます。Web広告運用や病院外スタッフとしてのウェブ担当者の配置、実務の提供も可能です。

クリニック開業を検討される際は、ぜひSTスマイルへお問い合わせください。

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