これから開業を考えている医師のなかには、医療モールでの開業を検討している人もいるでしょう。この記事では、医療モールで開業を成功させるためのポイントを紹介します。
医療モールでの開業を成功させるには、経営者が備えるべき条件、開業前に準備しておくべきこと、経営課題を解決する方法と、3つの重要なポイントをおさえる必要があります。詳しく解説するので、医療モールでの開業及び経営を成功に導きましょう。
医療モールでの開業!メリット・デメリットとは?
医療モールでの開業には、メリットやデメリットが存在します。それぞれ解説していくので、開業前によく確認しましょう。
メリット
集患力
医療モールは集患力が高いことがメリットの一つです。地域にとってランドマークとなることもあり、単独で開業するよりも強い存在感を示せます。商業施設のなかに医療モールが入っている場合も、周辺住民の認知度の高さから集患しやすいといえます。
経費・経営の負担が少ない
医療モールの建物は、クリニックが入ることを前提として設計されていることもあります。開業したいクリニックの計画によっては、内装費などを抑えられるかもしれません。
看板や駐車場、トイレなどをモール内で共有する場合は、その分だけ賃借面積が少なくなります。月々のランニングコストも安く抑えられるでしょう。
また、医療モールでは経費や経営の相談を担うコンサルタントが在籍しているケースもあります。
他のクリニックとの連携
医療モール内には診療科目の異なる複数のクリニックが入っているのが一般的です。専門外の疾患でもモール全体として対応しやすく、結果としてグループ診療の形をとった質の高い医療が実施できます。
また、それぞれのクリニックと連携すれば、単独のクリニックでは難しい訪問医療も可能です。患者一人ひとりのニーズに寄り添った対応を通じて、地域医療への貢献が可能になります。
デメリット
他のクリニックの影響
同じ医療モール内で運営する他のクリニックの評判が悪い場合、医療モール全体に悪影響を及ぼす可能性があります。運営するクリニックが風評被害を受けることもあるので、注意が必要です。影響を最小限にするために、前もって他のクリニックの評判を調べておきましょう。
また、開業後は患者とのつながりを意識することが必要です。医師としての営業力を培って、普段から患者と円滑な関係を築きましょう。
医療モール内の人間関係
医療モール内では、日頃から別のクリニックや調剤薬局のスタッフと顔を合わせることになります。もし人間関係が悪くなった場合、居心地の悪さを感じるかもしれません。また、医療機関どうしの関係悪化も、モール全体にも悪い影響を及ぼすことがあります。
選定ミス
医療モールの立地が明らかに悪く、思うように集患できないというケースもあります。また、建物や設備が使いにくいと、クリニックとして運営するのに不便を感じるかもしれません。
医療モールの運営会社によっては、内装や設備などを整えるにあたり、自由に業者を選定できない場合があります。立地や建物と合わせて、運営会社の情報もよく確認しておきましょう。
医療モールでの開業!失敗しないポイントとは?:その1 経営者としての条件を備える
医療モールで開業する場合、失敗しないためのポイントとして、経営者としての条件を備えることが挙げられます。具体的な内容を紹介します。
計画性
開業は計画性を持って進めることが大切です。金融機関から開業資金を融資してもらう場合、自己資金の比率も審査されます。そのため、早い時期から資金を積み立てることが重要です。
借り入れる際は、立地などから月々の集患数を予測し、年間の売上高や収益、費用を差し引いた純利益を前もってシミュレーションします。無理のない返済ができるか、しっかり検討しましょう。
開業に適する時期
開業してすぐに黒字化できるとは限りません。家計を圧迫しないように、ライフイベントも見据えて開業時期を決定することが大切です。
子供がいる場合は、大学進学の4~5年前までに開業するのがおすすめです。早いうちに黒字経営を達成しておけば、教育費がかかる時期でも余裕を持って対応できます。
開業の準備期間には、3カ月程度の余裕があったほうがよいという声もあります。開業時期は準備期間も考慮して設定しましょう。
経営に対する責任と知識
開業医はクリニックの運営者であり、経営に関する責任を負います。しかし、経営という視点が欠けており、クリニックの運営に頭を抱える医師も少なくありません。開業前には経営の知識も身に付けておきましょう。
経営と医療は別物なので、経営部分は信頼できるコンサルタントへ委託するのも一つの方法です。医療経営士と提携するSTスマイルでは、自院や市場の分析を通じて最適な経営プランを提供しています。
人脈と連携
医療モール内では、自院のスタッフだけではなく、他のクリニックのスタッフとも良好な関係を築く必要があります。医療モール全体の発展に寄与する姿勢を持って、協同していくことが大切です。
また、医療モールは地域社会のなかにあり、地域医療を担当する行政関係者との関わりも生じます。クリニックでの医療を通じて、あらゆる人脈とつながり、広げていくことを意識しましょう。
コミュニケーションスキル
医療モールのクリニックは、多くの人によって成り立っています。人をないがしろにした運営では、長く続きません。患者やスタッフ、他のクリニックの医師とも普段からコミュニケーションをとり、信頼関係を築きましょう。
「言わなくても大丈夫」と思うときほど、相手はこちらの意図を理解していないものです。当たり前と思えるような確認でも、きちんと行うことが大切です。
家族や周囲の同意
勤務医から開業を目指す場合は、勤務先の病院へ開業する意思を早めに伝えておきましょう。退職時に迷惑をかけないのはもちろんのこと、早めに説明して周りからの信頼を得ておくと、開業後も病院との連携や協力が期待できます。
もちろん、家族の理解も大切です。反対されて開業できないということのないように、よく話し合って同意を取り付けましょう。
好奇心や勉強意欲
医療や治療の技術は、日々進歩しています。患者の期待に応えられるクリニックであるためにも、日々勉強を重ねなくてはなりません。医療や治療に関する動向に対して、好奇心や勉強意欲を持ち続けましょう。
最新の医療知識などは、患者自身もインターネットなどを利用して収集しているものです。常に新しい情報を持ち続けることで、患者からの信頼も高まります。
柔軟性
決断力があることと、何もかも独善的に判断することは異なります。医療以外のことではスタッフの意見もよく聞き、良いものは積極的に採用するなど、寛容さを持って運営を進めましょう。
自分一人で完璧な運営を目指すのではなく、運営のコントロールをある程度他人にも委ねる柔軟性を持つことがポイントです。地域や患者のニーズをくみ取る力
開業医に対するニーズとは、何も専門性に特化した医療とは限りません。ときには、高度な医療技術を持った病院と患者の橋渡しを行う役割も求められます。
患者が適切な治療を受けられるように、別の医療機関とも連携してすぐに紹介できるようにしましょう。地域医療におけるクリニックと他の病院の機能分担を理解すると、地域や患者のニーズがくみ取れるようになり、重宝されるクリニックとなります。
医療モールでの開業!失敗しないポイントとは?:その2 開業前に目的とコンセプトを明確に
開業前に準備しておくべきこととして、開業の目的やコンセプトを明確にし、そこから立地や計画を考えることも重要なポイントです。それぞれ解説します。
開業の目的・コンセプト
漠然と開業してみても、経営はうまくいきません。開業の目的もコンセプトもあいまいなクリニックは強みがわかりにくく、患者からも信頼を得るのが難しくなるからです。
まずは、開業したい理由を振り返りましょう。「患者の不安に寄り添った医療が行いたい」など、あなただけの目的や志があるはずです。目的や志が明確になると、クリニックのコンセプトも見えてきます。
コンセプトを決定する際は、自身の専門や経歴を勘案することが大切です。専門や経歴を通じて自身の強みと弱みが分析できると、より戦略的なコンセプトを構築できるようになります。
立地
立地として医療モールを選定する際は、診療コンセプトと合致するかどうかを念頭に置くことが大切です。たとえば、仕事をしている保護者が気兼ねなく来院できる小児科であれば、住宅街や保育所などに近い場所が考えられるでしょう。
もちろん、競合クリニックのチェックも不可欠です。必要であれば、近隣住民に利用しているクリニックの聞き込みを行うといった調査も行った方がよいでしょう。
設計や施設の計画
クリニックの内装は、患者や医師、スタッフの動線を意識して設計する必要があります。動線がスムーズであることはもちろん、待合室や診察室から見た風景、防音などの対策も考慮して設計しましょう。
また、開業後に多い意見として、最初から施設を広くしておけばよかったという声があります。クリニックも経営年数を経ると、カルテなどの資料が増えていきます。施設の規模は、将来的な収納などを見越して決定することが大切です。
医療モールでの開業!失敗しないポイントとは?:その3 経営課題を解決できるパートナーを持つ
開業後は、広告による集患はもちろんのこと、スタッフの採用や資金計画など、さまざまな課題が発生します。主な課題内容について具体的なポイントを紹介します。こうした課題を解決するためには、専門知識を有するパートナーの存在も重要です。
広告・宣伝について
都心の開業医の場合、運営にかかる広告宣伝費は月10~30万円程度です。費用の大半は、インターネット上での広告です。ホームページの情報で来院を決めるという人は多く、充実した内容が欠かせません。広告規制の範囲内なら、クリニックの専門性を強くアピールできます。
特定のキーワードで検索した際に目立つ場所へ広告を表示させる、リスティング広告も盛んです。調べようという意欲を持った相手に対して強い宣伝効果が期待できます。
医療に関する広告については様々な規制が存在するため、専門知識を有したパートナーに相談しましょう。
開業前の広告スケジュール
開業の1カ月前にはホームページをプレオープンさせて、開院日や場所などを周知します。チラシで宣伝する場合、ポスティングは開業の1週間前くらいに行いましょう。新聞への折り込みは開業日直近の水曜日または木曜日がベストです。チラシの量が少なく、埋もれる可能性が減ります。
人事・採用について
オープニングスタッフの採用は重要です。初回来院時の雰囲気は、クリニックの印象を大きく左右します。クリニックのコンセプトに合ったスタッフと採用するようにしましょう。
また、患者との相性やクリニック内の人間関係からスタッフが辞めるケースも思いのほか多いです。一度スタッフが抜けると、採用や育成、フォローにはそれなりの労力が必要となります。給与ではなく働きやすさを重視する人も多いため、長くスタッフが定着するための方法を考えながら人事採用を行うことが大切です。
資金計画について
広告宣伝費や人件費のランニングコストなどから資金繰りが悪化しないよう、資金計画をきちんと立てることが大切です。収益が黒字化するまでには時間がかかります。少なくとも3年程度は赤字経営が続くという前提で資金計画を立てましょう。
また、予期せぬ事態による資金不足を防ぐためにも、売り上げ予測は低めに、経費は高めに設定しましょう。一方、患者数は利益に直結するので、来院患者予測は細かく分析します。
資金計画は、融資を受ける際にも必要です。専門的な資金計画を立てるためにも、医療関係に特化したパートナーを選ぶようにしましょう。
まとめ
医療モールにおける開業で失敗しないためのポイントは、経営者の条件を備えること、目的とコンセプトを明確にすること、そして経営課題を解決できることです。紹介した内容からポイントを再度見直して、開業準備を進めましょう。
開業準備で失敗したくないのであれば、経営コンサルタントを活用するのもおすすめです。STスマイルでは税理士や弁護士などと連携して、開業地の選定やスタッフの採用までトータルでサポートします。これから開業を行うのであれば、ぜひ相談してください。
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