外来医師多数区域とは?2020年度の最新情報と開業する際の注意点を解説

新規開業を検討する際に、開業エリアの選定は最も重要な項目の1つです。開業エリアを選定する前に押さえておきたいのが、2020年度から運用が開始される「外来医師多数区域」についてです。

本記事では、「外来医師多数区域」の詳細や、該当エリアで新規開業する際の注意点などを紹介します。これから開業を検討する場合にお役立てください。

目次

外来医師多数区域とは

2019年3月、厚生労働省より都道府県宛てに「医師確保計画策定ガイドライン」と「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン」が通知されました。これにより、外来医療機能が一部に偏ることを防ぐため、2020年度から「外来医療計画」に関する取り組みが開始されます。

外来医療機能が集中している地域を「外来医師多数区域」とし、この地域に開業する際には、さまざまな制限がかかることになりました。「外来医師多数区域」は、厚生労働省が定めた「外来医師偏在指標」のうち、上位1/3に該当する地域を指します。「外来医師偏在指標」とは、外来医療機能が集中、または不足している地域を2次医療単位で可視化したものです。

「外来医師多数区域」にあてはまるエリアで新規開業する場合は、その地域で不足している外来医療機能を担う必要があります。初期救急医療や公衆衛生、在宅医療などがこれに該当します。

医師をとりまく環境

医師の数は過去最多の30万人を越えるといわれています。しかし、同時に医師不足も叫ばれています。その理由は、医師が都心部に偏っていて、地域格差があるためです。つまり、都市部の大都市医療圏には医師があふれているのに、過疎地域医療圏では医師が不足しているのです。

郊外になればなるほど、医師不足は深刻です。医師が不足していると休日夜間の応対が十分にできないため、整形外科の外来を閉めているという総合病院もあります。

外来医師多数区域設定の目的

外来医師多数区域設定の背景には、過疎地域医療圏の医師不足があります。そのため、都市部の大都市医療圏に医師が集中してしまうのを防ぐ目的で、外来医師多数区域が設定されました。医師や外来医療機能の偏りを解消し、郊外の過疎地域医療圏にも安心で安全な外来医療を届けることが求められています。

外来医師多数区域の確認の仕方

新規開業をするときに確認しておきたいのが、外来医師多数区域に該当するエリアです。厚生労働省のホームページで確認することができます。また、各都道府県からも新規開業希望者に向けて情報を開示する予定になっています。開業エリアを決める前に、まずは外来医師多数区域へ該当していないか各都道府県に確認してみましょう。

外来医師多数区域に開業するには

外来医師多数区域に開業するには、あらゆる取り決めがあります。必要な手続きや注意点について解説します。

必要な手続き

外来医師多数区域に開業をする場合、地域で不足している医療機能を担うことを話し合う必要があります。不足しがちな医療機能とは、「在宅医療」「初期救急医療(土日・夜間の診療)」「公衆衛生(学校・産業医、予防接種等)」などです。この内容に合意する旨を記載する欄が、開業届けに用意される予定となっています。

これは、2020年4月より開業する全てのクリニックに求められるもので、自由診療のクリニックやビル診療のクリニックも同様です。ただし、話し合いの内容を開業希望者が拒否することもできます。その場合は、「外来医療のあり方を協議する場」への出席や、拒否する旨の文書を提出することが求められます。

注意点

複雑な手続きを行ってでも都市部に開業したいと考える場合もあるでしょう。その際に、注意しておくべきポイントを2つ紹介します。

既存クリニックとの差別化が必要

外来医師多数区域に開業するためには、同じ地域にあるクリニックとの差別化が必要です。既存のクリニックではカバーできない分野の診療を行うことなどが求められます。

クリニックを開業する場合、診療科目は原則2つ以内です。いくら診療できるといっても、内科、外科、小児科、循環器内科と診療科目をいくつも羅列することはできません。クリニック名と診療科目において、専門性や特徴を打ち出して、差別化をはかりましょう。専門性の高い診療技術があれば、広域から集患することができます。

診療科目で差別化ができない場合は、診療時間を見直すという方法もあります。夜間や休日など、ニーズの高い診療時間を検討してみましょう。

軌道にのるまでに時間がかかる場合がある

外来医師多数区域に無事開業できたとしても、競合が多い地域であることには変わりありません。診療の待ち時間が少なく、患者が既存のクリニックで満足している場合、新しいクリニックを受診しようと思う可能性は低くなります。そのため、新規開業のクリニックは集患できるまで時間がかかる場合があります。

スムーズに集患するには、開業前から広告などで認知拡大に努めることが大切です。計画的に集患のための準備を行いましょう。

また、認知拡大までの間もクリニックは営業を続けなければなりません。集患できなくてもスタッフへの給与を支払ったり、維持費がかかったりします。軌道にのるまで、当面の運転資金を確保しておくことも重要です。

開業エリア選定のポイントとは

外来医師多数区域以外でも、開業エリアを選ぶ際に押さえておきたい点があります。そこで、開業エリアを選定する際のポイントを紹介します。

患者層

開業エリアを考えるときに重要なポイントが、周辺に患者となり得る人がいるかどうかです。空き物件が出たからといって適当な場所に開業しても、患者層が診療内容に合っていなければ集患は見込めません。年齢別人口や傷病別受療率などをチェックし、潜在的な患者がどの程度存在するのか確認しましょう。

競合が多い地域であっても、潜在的な患者が多ければ参入できる可能性も高くなります。また、診療内容に合ったニーズがあるか確認することも大切です。

利便性

患者が通院することを考えると、交通の利便性も重要です。駅からの距離、ショッピングセンターや公共施設など集客がある建物からの距離を確認しましょう。また、人の流れを妨げるような坂や川の有無もチェックする必要があります。

階数に関しては1階が適しています。その理由は、1階のほうが周辺を通る人に認知されやすいためです。そして、物件が見つかったら現地に足を運びましょう。Webの情報だけに頼らず、自分の目で確かめることが大切です。

競合クリニック

実際に現地を見て、患者が集中している競合クリニックがないかを確認する必要があります。同じ診療科目のある競合クリニックが存在しているエリアは、避けられるのであれば避けるべきです。患者は一度信頼した医院をそう簡単には変えません。そのため、競合クリニックの地域からの信頼が厚いほど、新規開業するクリニックの口コミが広がりにくくなります。

まとめ

外来医師多数区域で新規開業する場合、地域で不足している外来医療機能を担うことが求められます。そのためには、既存のクリニックとの差別化や集患のための宣伝が大きなポイントです。

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